2025年7月22日火曜日

"カブトムシがおしえてくれた・・・ "というお話

先週のことです。

7月18日(金)のこと。

やすみ時間に・・・

1年生のおともだちがひとり・・・

校長室にやってきたんです。









「どうぞ」って私の声を聞いて・・・

とことこと入ってきたその目には・・・

もう今にもこぼれそうな涙が光っていて・・・








手には・・・

しんでしまったカブトムシ。


私はね・・・

" ああ・・・なるほど・・・"って思ったんです。

" いつかくる日が・・・

 とうとうやってきたんだね " って思ったんです。










おともだちが言ったんです。

「どうしてしんじゃったの?」って。

「私があそばせすぎたから・・・?」って。

「私のせいかもしれない・・・」って。









こたえたんです。

「カブトムシはね・・・

 夏の間にしんでしまうんだよ。」って。

「カブトムシのいのちはね・・・

 夏でおわりなの。」って。








そしてね・・・

おともだちの近くに寄って・・・

しんでしまったカブトムシを・・・

いっしょに手のひらで包みながら・・・

こうお話ししたんです。









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きみがカブトムシをとても大切にしていたこと、校長先生はよおく知っているよ。カブトムシが教室にやってきた日、きみはとても大事そうにカブトムシをだっこしていたね。あれから毎日、きみはカブトムシのお世話を一生けんめいにしていた。来る日も来る日も、カブトムシとたのしそうに遊んでいた。


カブトムシと思いっきり遊んだからしんじゃったのかもって思ったんだよね。校長先生はちがうって思う。カブトムシはきみと毎日遊べてたのしかったんだって思う。きみがカブトムシと遊んでとってもたのしかったのとおなじようにね。カブトムシもきみのことが大好きだったはずだよ。そして、いのちがおわるとき、きみに「ありがとう」って言っていたはずだよ。


生き物にはね、かならずいのちがおわるときがくる。カブトムシが夏の間にしんでしまうのとおなじように、とってもかなしいことだけれど。人間もおなじだよ。校長先生にだって、やがてそのときはくる。今、きみのまわりにいるたくさんの人たちだってそうだよ。

そのときのことを考えると、とってもさみしくって、泣きたいくらいの気持ちになるよね。



でも・・・校長先生は思うんだよ。

きみにとって、今いちばん大切なことはね、今あるいのちを大切にすることなんだって。きみのいのちも大切にしてほしいし、おなじように、きみのまわりのすべての人たちのいのちも大切に思ってほしい。きみを含めたすべてのいのちあるものをこころから大切にすることができる子になってほしい。

そのためにまずは・・・きみのおともだちをこれまで以上にもっともっと大切にすることからはじめてみるといいんだって思うよ。きっとカブトムシもよろこんでくれると思う。



きみにはできるよ。カブトムシのことをこれほどまでに大切に思って、これほどまでにかわいがることができたんだから。そしてね、きみはこれほどまでにやさしい子なんだから。

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おともだちが・・・

こっくり こっくりとうなずきながら・・・

お話を聞いてくれているその間・・・


この子の涙が・・・

私の手の甲に・・・

ぽたぽた ぽたぽたと・・・

落ち続けていたんです。










午後。

" どうしているかな・・・"って思って・・・

のぞいてみた1年生の教室。








あのおともだちが・・・

がんばっておべんきょうをしている・・・

ちっちゃな身体を見つめながら思っていたんです。


" きみは・・・

 よおくわかってくれたんだね。"って。







" カブトムシがおしえてくれた・・・

 とてもとても大切なこと "というお話でした。