前日から予感はしていたんです。
5年生のみんなが家庭科の調理実習で・・・
じゃがいもとほうれん草のお料理を・・・
するんだっていうことを耳にしたときから。
以前 みんなが・・・
お茶をいれるおべんきょうをしたとき・・・
なみなみとお茶の入った湯呑茶碗が・・・
班の数だけならんだこと。
その数6杯・・・。
みんなはね・・・
「飲んでみて審査してください。」って。
「優勝は何班なのか決定してください。」って。
だから・・・予感がしていたんです。
" 今日は・・・
じゃがいもとほうれん草がくる・・・"って。
" 容赦なく・・・それぞれ6つずつくる・・・"って。
だから私はね・・・
覚悟を決めて・・・
昨日の夕ご飯も今日の朝ごはんも食べずに・・・
プチ断食をしてやってきたんです。
(これは絶対にうそ・・・)
(うそを言いました・・・)
(よい子はまねをしません。)
午後。
5年生が調理実習してる・・・
家庭科室にいってみたんです。
(さらに覚悟を決めるために・・・)
みんなはね・・・
やっぱりさすがで・・・
ほんと一生けんめいだったんです。
ただ・・・
お・・・こえー
(おいおい・・・指が・・・
包丁の下にきてないか・・・?)
お・・・こえー
(「ぼっかーん」っていかないか・・・?)
(ちょっと 腰が引けてないか・・・?)
(その手・・・ふるえてないか・・・?)
お・・・こえーー
(きみ・・・平気なのか・・・?)
(よこっちょから・・・包丁入れるのか・・・?)
なんだかんだと言いながら・・・
むかえた放課後。
校長室にもどって・・・
パソコンにむかっていると・・・
そのときはやってきてしまったのです。
(いいえ・・・やってきたのです。)
校長室のドアがノックされて・・・
「審査してください。」って。
「絶対の自信があるふた品です。」って。
「記念写真撮ってください。」って。
夕暮れがせまったひとりぼっちの校長室・・・。
ならんだじゃがいもとほうれん草を・・・
つぎつぎといただいて完食した私はね・・・
こころを込めて表彰状をつくったんです。
優勝チームは決めたけれど・・・
(きっと「決めろ! 決めろ!」って・・・
とっちめられるから・・・)
6つすべての班にね・・・
表彰状を書いたんです。
この表彰状はね・・・
がんばってつくった・・・
じゃがいもとほうれん草のお料理を・・・
私にも食べさせてくれた・・・
お礼の表彰状だったんです。
だから・・・
6つすべての班に表彰状を書いたんです。
じゃがいもとほうれん草・・・
そのお料理はね・・・
想い出にのこる味がしたんです。
"5年生 じゃがいもとほうれん草 "のお話でした。
ところで。
みんなが必死にお料理してるとき・・・
私はね・・・
ボウルの中でお水にぷかぷかと浮いている・・・
じゃがいもをにぎって・・・
鼻に持っていってつぶやいたんです。
「あ・・・このじゃがいも・・・
メロンのにおいがするぅ・・・」
(あ・・・においかいじゃった・・・)
「あ・・・このじゃがいも・・・
オレンジのにおいがするぅ・・・」
(あ・・・においかいじゃった・・・)
「あ・・・このじゃがいも・・・
グレープのにおいがするぅ・・・」
(あ・・・においかいじゃった・・・)
やっぱりみんなはね・・・
いつまでも いつまでも かわいかったんです。
みんなのこと・・・
これからもっともっと・・・
たいせつにしようって・・・
そう思ったんです。